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ふわりとした原毛と、縮絨されて目の詰まったウール生地を並べて置いたところ(イメージ)

縮絨とは?読み方・英語表記・縮絨加工の意味と仕組みを解説

「縮絨」という言葉を調べると、説明が2通り出てきます。ウールを縮ませて厚みを出す加工だという説明と、縫製の前に生地を安定させる工程だという説明です。どちらも間違いではありません。ただ、同じ言葉で別のことを指しているために、調べるほど分からなくなります。

読み方は「しゅくじゅう」。絨毯(じゅうたん)の「絨」で、毛織物を意味する字です。文字どおり「毛織物を縮める」加工を指す言葉として始まりました。

イツミは1961年創業、縫製前の生地を整える縮絨機(スポンジングマシン)を長年つくってきたメーカーです。機械を受注生産かつ完全社内一貫生産体制で手がけています。この記事では、まぎらわしい2つの意味を整理したうえで、ウールが縮む仕組みから、家庭での縮絨と工場での縮絨の違いまでを解説します。

縮絨とは?読み方・英語表記・2つの意味

縮絨(しゅくじゅう)とは、もともとは羊毛を中心とした繊維に水分・熱・力を加えて繊維同士を絡ませ、生地を縮ませて目を詰め、厚みと風合いを出す加工のことです。英語では fulling、または milling と呼ばれます(毛織物の仕上げの現場では milling とも呼ばれ、どちらも同じ加工を指します)。

一方、日本のアパレル生産の現場では、これとは別に「縮絨機」という言葉が使われています。こちらが指しているのは、縫製の前に生地へ蒸気と熱を与えて、あとから出る縮みを先に出しておく前処理の機械です。英語ではスポンジング(sponging)にあたります。

縮絨 → ①生地の風合いをつくる加工 / ②縫製前に縮みを先に出す前処理

つまり「縮絨」という言葉は、生地をつくる側の加工と、縫う前に生地を整える前処理の両方に使われています。同じ「縮める」でも、目的がまったく違います。

比べる点 ①風合いをつくる縮絨 / ②縫製前の縮絨(スポンジング)
目的 ①は生地を縮ませて厚みと風合いを出すこと。②はこれ以上縮まない状態にして寸法を安定させること。
行う場所 ①は生地をつくる側の整理加工(仕上げ)の工程。②は縫製工場や、裁断前を請け負う加工業者の工程。
仕上がり ①は生地が縮んで目が詰まり、表面が毛羽立った風合いになります。②は見た目は大きく変わらず、寸法が落ち着きます。
使う機械 ①はロータリー縮絨機など、生地をつくる側(整理加工場・染工場)の設備。②は縮絨機(スポンジングマシン)。

この記事の後半で扱うイツミの機械は②のほうで、縫製の前に生地を安定させる機械です。

メーカー担当者からのワンポイントアドバイス

会話がかみ合わないと感じたら、「生地をつくる話ですか、縫う前の話ですか」と一度確かめてみてください。相手が生地屋さんなら①、縫製工場なら②を指していることがほとんどです。

なぜウール(獣毛)は縮むのか|スケールとクリンプの仕組み

そもそもなぜウールは、ほかの繊維と違う縮み方をするのでしょうか。生地が縮むこと自体は、綿でも合繊でも起こります。ウールをはじめとする獣毛に固有なのは、繊維同士が絡み合って二度と元に戻らなくなる縮み方をすることです。その理由は、繊維の形にあります。

ウールをはじめとする獣毛の繊維の表面は、うろこ状の層(スケール)で覆われています。人の髪のキューティクルと同じような構造で、根元から先端に向かって重なっています。このスケールは、繊維が水分を含んでふくらむと引っかかりやすくなります。その状態で繊維同士がこすれ合うと、うろこの向きのせいで繊維は根元の方向へ移動しやすくなり、少しずつ絡み合って戻らなくなります。

さらにウールの繊維には、天然のちぢれ(クリンプ)があります。まっすぐではなく波打っているため、絡まりやすく、いったん絡むとほどけにくくなります。

水分+力(もむ・こする)〔熱が反応を速める〕 → 繊維が引っかかって絡む → 戻らない

これらの条件がそろったときに、繊維同士が絡み合って生地が縮み、目が詰まっていきます。これがフェルト化と呼ばれる現象で、これを管理して生地づくりに使うのが縮絨です。

逆に言えば、この条件がそろわないと縮絨は進みにくくなります。なかでも欠かせないのは水分と力で、熱はその反応を速める役目です。工業的な縮絨では、これに石けん液やアルカリ液(生地によっては酸)を加えて、狙った縮み方になるよう条件を整えます。

なお、同じ獣毛でもスケールの立ち方や繊維の長さ、ちぢれの強さは種類によって違うため、絡みやすさには差があります。カシミヤ・モヘヤ・アンゴラなどの違いはウール縮絨とは?縮絨ウールの風合いの仕組みと縫製の注意点で整理しています。

一方、スケールを持たないポリエステルやアクリルなどの化学繊維では、この絡み合いは起こりません(熱による収縮は別に起こります)。

同じウールでも、スケールを処理した防縮加工(「洗える」ウール製品などに使われます)を施した生地では、意図した縮絨が進みにくくなります。防縮加工が入っているかどうかで、熱と水分への反応が変わるということです。前処理の条件を決めるときは、まず生地の仕様を確認しておくと迷いません。

ウール繊維の表面にあるうろこ状のスケールと、繊維のちぢれを表した模式的な拡大イメージ(イメージ)

縮絨した生地の種類|メルトン・フランネル

縮絨は、生地に厚み・保温性・独特の表面感を与えます。軽く縮絨すればウールフランネル(フラノ)に、強く縮絨すればメルトンになります。

強く縮絨するほど生地の面積は小さくなります。手間をかけたぶん単価は上がりますが、原料に対する取れ高は落ちます。また、厚く密になるということは重くなり、ドレープも出にくくなるということです。どこまで縮絨するかは、用途から逆算する生地づくりの設計そのものです。縮絨のあとの起毛やシャーリング(剪毛)でも、表情はさらに変わります。

縮絨の程度による生地の違いと、それぞれを縫うときの注意点は、ウール縮絨とは?縮絨ウールの風合いの仕組みと縫製の注意点で詳しく解説しています。

ニットの縮絨|セーターが縮むのと同じ現象

「縮絨」は、織物だけの話ではありません。手編みのニットや羊毛フェルトの世界でも同じ言葉が使われます。仕組みは、ここまで見てきたものとまったく同じです。

洗濯でウールのセーターが縮んでしまうのも、原理としては同じ現象です。狙って起こせば加工、意図せず起これば事故。この差を分けているのは、条件を管理できるかどうかだけです。

同じことは生産の現場でも起こります。編み地を縮絨・前処理するときにどこへ気をつけるかは、ウール縮絨とは?縮絨ウールの風合いの仕組みと縫製の注意点の「カシミヤは縮絨できる?」の章でまとめています。

縮絨のやり方は家庭と工場でどう違うのか

縮絨に要る条件は、家庭でも工場でも変わりません。家庭や手芸では、水分と力をお湯と手もみでそろえ、石けんを助けに使います。では、アパレルの量産でも同じことをすればよいのかというと、そうはいきません。

  • 縮む量をコントロールできない:手作業では、揉む力も時間も一定になりません。同じだけ縮ませるのが難しくなります。
  • 面によってムラが出る:部分的に縮みが強く出ると、地の目が曲がったり、裁断できない生地になったりします。
  • 反物の長さに耐えられない:数十メートルの原反を均一に処理する方法として、手作業は成立しません。

そのため量産では、風合いをつくる縮絨も専用の機械で条件を管理しながら行います。この工程を担うのは生地をつくる側で、実務では機屋(織り屋)から整理加工場や染工場へ委託して行われます。

縫製工場が担当するのは、その先になります。届いた生地を「これ以上縮まない状態にする」ための前処理——それが、縫製前のスポンジング加工です。

つまり同じ現象でも、生地をつくる側はあえて起こし、縫う側は先に起こしきってしまうという、逆方向の使い方をしています。家庭や手芸の縮絨は、前者を手作業でなぞったものだと考えると位置づけが見えてきます。

縮絨加工は工場でどう行うのか|縮絨機(スポンジングマシン)の仕組み

アパレルの生産現場で「縮絨加工をかける」と言えば、多くは②の縫製前の前処理を指します。生地に蒸気(水分)と熱を与えて、織り・染色・巻き取りの工程で残った張力と歪みをゆるめ、そのあと冷却して寸法を固定する工程です。フェルト化させるのではなく、生地が動かない状態にするのが目的です。

イツミの機種を例にとると、NTS-SP5は、独自発想のスチームゾーンに原反を通すことで、素材に内在する張力や歪みを緩和処理によって除去し、素材のリラックスを促進させて寸法の安定化を図ります。近年増えている高機能素材のように、従来の蒸気式では縮みにくい生地には、電熱ヒーターで200℃まで上げられるNTS-717FIR(高温型遠赤外線仕様)も用意しています。

NTS-717FIR 高温型遠赤外線仕様の縮絨機(スポンジングマシン)本体外観

NTS-717FIR(高温型遠赤外線仕様)|高温型遠赤外線仕様の縮絨機

遠赤外線で生地の内部まで熱を通します。従来の蒸気式では縮みにくかった生地や新素材に。最大処理幅1,700mm。

詳しくはこちら

解反からスチーム・加熱・冷却までの工程の中身は、スポンジング加工とは?目的・工程・縮絨との違いで詳しく解説しています。機種選定の考え方は縮絨機(スポンジングマシン)の選び方|7つの視点をご覧ください。

まとめ

縮絨(しゅくじゅう)は、ウールに水分・熱・力を加えて繊維を絡ませ、生地を縮ませて風合いを出す加工を指す言葉です。獣毛が絡んで縮むのは、表面のスケールとクリンプという繊維の形によるものです。同時に日本のアパレル生産の現場では、縫製前に縮みを先に出しておく前処理も「縮絨」と呼ばれ、その機械が「縮絨機(スポンジングマシン)」です。生地をつくる側の加工と、縫う前に整える前処理。この2つを分けて考えると、言葉の混乱は解けます。

縫製前の工程としての縮絨(スポンジング加工)を調べている方は、工程の中身を解説したスポンジング加工とは?目的・工程・縮絨との違いもあわせてご覧ください。イツミでは、扱っている素材と処理条件のご相談を承っています。

よくある質問|縮絨のQ&A

Q. 縮絨の読み方は何ですか?

「しゅくじゅう」と読みます。「絨」は絨毯(じゅうたん)の絨で、毛織物を意味する字です。

Q. 縮絨は英語で何と言いますか?

fulling(フーリング)です。毛織物の仕上げの現場では milling(ミリング)とも呼ばれ、どちらも同じ加工を指します。なお、縫製前に生地の縮みを先に出しておく前処理は sponging(スポンジング)と呼び分けるのが一般的です。

Q. 縮絨加工とは何ですか?

縮絨を目的とした加工の総称です。生地メーカー側では風合いを出す加工を、縫製工場側では縫製前に縮みを先に出す前処理を、どちらも「縮絨加工」と呼ぶことがあります。工程としては別物なので、どちらの話かを確認すると混乱が減ります。

Q. 縮絨機とスポンジングマシンは同じ機械ですか?

縫製工場で「縮絨機」と言えば、スポンジングマシンと同じ機械を指します。日本では古くから「縮絨機」と呼ばれてきたため、英語由来の「スポンジングマシン」と併記されるのが一般的です。ただし「縮絨機」という言葉は、生地を縮ませて風合いを出す生地メーカー側の設備(ロータリー縮絨機など)にも使われます。どちらの話かで機械はまったく別物になるので、縫製前の機械としての選び方は縮絨機(スポンジングマシン)の選び方|7つの視点をご覧ください。

Q. なぜウールは縮絨するのですか?

ウールの繊維の表面が、うろこ状のスケールで覆われているためです。水分を含んだ状態でこすれ合うと、繊維がスケールの向きに沿って根元方向へ移動しやすくなり、絡み合って元に戻らなくなります。スケールを持たないポリエステルやアクリルでは、この絡み合いは起こりません(熱による収縮は別に起こります)。

Q. 縮んでしまったウールのセーターは元に戻せますか?

基本的には戻せません。縮絨(フェルト化)は繊維表面のスケールが絡み合って動かなくなる現象で、繊維一本一本の位置関係が変わってしまっているためです。ぬるま湯で繊維をほぐして少し伸ばせる場合はありますが、元の寸法まで戻ることはまれです。

Q. 縮絨するとどんな生地になりますか?

縮絨の程度で変わります。軽めに縮絨した生地はやわらかく起毛した風合いになり、ウールフランネル(フラノ)がその代表です。強く縮絨すると目が詰まって厚く密になり、メルトンのような生地になります。

製品紹介

NTS-SP5 高速・量産向けの縮絨機(スポンジングマシン)本体外観

NTS-SP5|量産向けのハイクラス機(処理速度★5)

アパレルメーカーとの共同開発機。独自発想のスチームゾーンで張力や歪みを除去し、寸法の安定化を図ります。天然繊維・合繊織物の両方に対応。最大処理幅1,800mm。

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NTS-717FIR 高温型遠赤外線仕様の縮絨機(スポンジングマシン)本体外観

NTS-717FIR(高温型遠赤外線仕様)|高機能素材に対応するミドルクラス機(処理速度★3)

電熱ヒーターで200℃まで上げ、遠赤外線で生地の内部まで熱を通します。従来の蒸気式では縮みにくかった生地や新素材に。最大処理幅1,700mm。

詳しくはこちら

NTS-202HS 小型の縮絨機(スポンジングマシン)本体外観

NTS-202HS|小ロット・省スペース向けの小型機(処理速度★1)

小型ながら解反・スチーミング・加熱・振り落としの機能を備えた縮絨機。1着分に裁断した生地にも対応します。処理幅1,800mm、本体重量600kg。

詳しくはこちら

縮絨機(スポンジングマシン)製品一覧

解反加湿機から量産用の広幅機まで、イツミの縮絨機ラインナップを一覧でご覧いただけます。

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