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目の詰まった厚手の縮絨ウール生地を重ねて置いたところ(イメージ)

ウール縮絨とは?縮絨ウールの風合いの仕組みと縫製の注意点

縮絨ウールという言葉は、生地の展示会でも、アパレルの企画会議でもよく登場します。厚みがあって、表面がやわらかく起毛していて、切りっぱなしでも様になる——あの独特の風合いを指す言い方です。

ただ、いざその生地を縫うとなると、普通のウール地と同じようには扱えません。厚い、縮む、プレスでつぶれる。生産の現場では、この3つがそのままトラブルの種になります。

イツミは1961年創業、縫製前の生地を整える機械を受注生産かつ完全社内一貫生産体制で手がけてきたメーカーです。この記事では、縮絨ウールの風合いがどう生まれるのかを整理したうえで、縫製の現場で気をつけたい点までを解説します。

ウール縮絨(縮絨ウール)とは?繊維を絡ませて目を詰めたウール生地

ウールの縮絨(しゅくじゅう)とは、羊毛に水分・熱・力を加えて繊維同士を絡ませ、生地を縮ませて目を詰める加工のことです。この加工を施した生地を「縮絨ウール」と呼びます。

織り上がったばかりのウール地は、たて糸とよこ糸の隙間が見える状態です。そこに水分と熱を与えながら力を加えると、繊維表面のうろこ状のスケールが引っかかり合い、生地全体が縮んで密になっていきます。この縮んだ分が、そのまま厚みと保温性になります。

縮絨が起こる仕組みそのものについては、縮絨とは?読み方・英語表記・縮絨加工の意味と仕組みで詳しく解説しています。

織り目が見える生地と、縮絨されて目が詰まった生地を並べた比較(イメージ)

縮絨ウールの風合いはどう生まれるのか|軽縮から強縮まで

同じ「縮絨ウール」でも、どこまで縮絨するかで仕上がりはまったく変わります。

軽く縮絨した生地(軽縮)

見た目:織り目が残り、表面はやわらかく毛羽立った程度

特徴:軽く、しなやかで、ドレープが出ます。ジャケット地やウールシャツ地に向きます

代表例:ウールフランネル(フラノ)など

しっかり縮絨した生地(強縮)

見た目:織り目が見えにくく、フェルトに近い密な表面

特徴:厚く、目が詰まり、切りっぱなしでもほつれにくくなります。保温性が高くコート地に向きます

代表例:メルトンなど

さらに、縮絨のあとに起毛(表面の毛を掻き出す)やシャーリング(剪毛。毛足を刈りそろえる工程)を組み合わせることで、同じ織物からまったく違う表情の生地がつくられます。

メーカー担当者からのワンポイントアドバイス

「縮絨ウール」という指定だけでは、生地の性格は決まりません。どの程度縮絨されたものかによって、必要な針も糸も、プレスの条件も変わります。サンプルを受け取ったら、厚みと目の詰まり方を先に確認しておくと、あとの工程が楽になります。

カシミヤは縮絨できる?獣毛素材・ニットを縮絨するときの注意点

縮絨が起こるのは羊毛だけではありません。カシミヤやアルパカなどの獣毛にも繊維表面にスケールがあり、水分・熱・力の条件がそろえば繊維は絡み合います。

ただし、絡みやすさは獣毛によってかなり違います。しかも「細い=よく絡む」とは限りません。同じ種類の中では細いほど絡みやすくなりますが、種類をまたぐと細さだけでは決まらず、スケールの立ち方、繊維の長さ、ちぢれの強さが重なって効いてきます。

  • カシミヤ:繊維が細く(およそ14〜19マイクロメートル)、やわらかい素材です。表面のスケールは羊毛より突起が少なくなめらかで、ちぢれも弱いため、同じ太さの羊毛と比べればフェルト化のしやすさ自体は低いという報告があります。ただし産地や原毛の状態でばらつきが大きいため、羊毛より安全と決め打ちはできません。いったん風合いを損なうと取り返しがつかないので、羊毛と同じ条件をそのまま当てず、穏やかなところから詰めるのが基本です。
  • モヘヤ:繊維が太く(初回剪毛のキッドでおよそ22〜30マイクロメートル、成獣では32〜36マイクロメートル、さらに太いヘア区分では37〜42マイクロメートル)、スケールが寝ていて表面がなめらかなため、羊毛ほど簡単には絡みません。「獣毛だからデリケート」とは限らない例です。
  • アンゴラ(兎毛):細い産毛でおよそ11〜13マイクロメートルと、カシミヤよりさらに細い繊維ですが、スケールがほとんど発達しておらず表面が滑らかです。繊維同士が絡みにくく滑るため、単独では扱いにくく、羊毛と混紡して使われるのが一般的です。
  • アルパカ:スケールは低めですが繊維が長く、羊毛より高い程度にフェルト化するという報告があります。獣毛の中では絡みやすい側なので、羊毛と同じ条件でも進みすぎることがあります。

つまり獣毛には、絡みにくい側(カシミヤ・モヘヤ・アンゴラ)と絡みやすい側(アルパカ)が同居しています。「獣毛だから」では決まらないので、素材ごとにテストして条件を決めるのが確実です。

なお、毛玉(ピリング)のできやすさと、生地が縮むフェルト化のしやすさは別の話です。表面に短い繊維が丸まって毛玉になることと、繊維同士が絡んで生地全体が縮むことは、別の現象として分けて考えてください。

ここまでは、生地をつくる側の縮絨(フェルト化)の話です。縫製前のスポンジング加工では、もむ・こする力が加わらないためフェルト化そのものは起こりにくく、気をつけるのはむしろ熱と圧になります。カシミヤのように起毛した表面がやわらかい素材では、条件が強いと表面がつぶれてテカリが出ます。

もうひとつ、編み地(ニット)にも注意が要ります。編み地は織物より伸びやすく、縮絨によってさらに目が詰まるため、寸法の管理が難しくなります。編み地の前処理では、生地を引っぱらずに送る(ノーテンションの)搬送が特に効いてきます。

なお、ポリエステルやアクリルなどの化学繊維には、繊維を絡ませるスケールがありません。ウールと化繊の混紡生地では、ウールの混率が高いほど絡みやすくなると考えておくと判断しやすくなります。

縮絨ウールを縫製するときの注意点

縮絨ウールは、生地としてはすでに縮んだ状態です。ここで見落とされやすいのが、「縮絨済み=もう縮まない」ではないという点です。

縮絨のあとにも、整理加工や巻き取りの工程で生地は引っぱられます。その張力が残ったまま裁断・縫製に進むと、あとからプレスや蒸気で熱と水分が加わった段階で、残っていた分が縮みとして出てきます。縮絨ウールでも、縫製前のリラックス処理(スポンジング加工)が必要になるのはこのためです。

どれだけ残っているかは生地ごとに違い、仕上げの工程はもちろん、巻き取りの張力、保管していた期間と温湿度、組織や密度でも変わります。

現場で押さえておきたい点をまとめます。

気をつける点 内容
寸法変化 縮絨済みでも、巻き取りで残った張力によって後から縮むことがあります。裁断の前にリラックス処理をかけて寸法を確定させておくと、ロット間のばらつきが抑えられます。
厚みへの対応 目が詰まって厚い生地は、縫製側の設定(針・糸・押さえ)の見直しが必要になります。適した組み合わせは生地の目付と厚みで変わるため、サンプルで詰めておくのが確実です。縫い代が重なる箇所の段差にも注意が必要です。
プレス・アイロン 強く当てると起毛した表面がつぶれ、風合いが失われたりテカリが出たりします。中間プレスは最小限にし、当て布とスチームの使い方で加減します。
地の目 縮絨で目が詰まると織り目が読みにくくなります。地の目が曲がったまま裁断すると、着用時のねじれとして出ます。
裁断 強く縮絨した生地はほつれにくい反面、厚みで刃が逃げやすくなります。重ね枚数の設定は控えめに考えます。

メーカー担当者からのワンポイントアドバイス

新しい縮絨ウールを扱うときは、いきなり本生産に入らず、短い尺で一度リラックス処理を試して、どれだけ縮むかを実測しておくことをおすすめします。数字が分かってしまえば、型紙側で吸収するのか工程側で吸収するのかを判断できます。

縮絨ウールの前処理|工場では縮絨機でどう扱うか

縫製工場での前処理は、縮絨機(スポンジングマシン)で行います。工程の中身はスポンジング加工とは?目的・工程・縮絨との違いで解説しています。

厚手の縮絨ウールで特に効いてくるのが、搬送のしかたと冷却です。厚い生地を引っぱりながら送ると、それだけで新たな張力が入ってしまいます。また、熱いまま次の工程へ送ると、生地は落ち着かないまま動き続けます。

NTS-717FIR(高温型遠赤外線仕様)は、この2点を押さえた構成の機種です。独自の距離検出センサーによって、送り込みローラーが素材を引っぱらずに送り出します。バイブレーション装置で素材をよりリラックスさせ、熱風で乾燥処理をしたうえで、強力な冷却装置で安定させて自動的に振りたたみます。電熱ヒーターによる遠赤外線で生地の内部まで熱が浸透するため、従来の蒸気式では縮みにくかった生地にも対応できます。

小ロットやサンプルが中心で、まずどれだけ縮むかを確かめたい段階であれば、小型機のNTS-202HSという選択肢もあります。1着分に裁断した生地にも対応しているので、テストピースのような短尺物を通したいときにも使えます。

NTS-717FIR 高温型遠赤外線仕様の縮絨機(スポンジングマシン)本体外観

NTS-717FIR(高温型遠赤外線仕様)|厚手の生地を安定して流すミドルクラス機

電熱ヒーターで200℃まで上げられます。最大処理幅1,700mm。

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NTS-202HS 小型の縮絨機(スポンジングマシン)本体外観

NTS-202HS|まず試したい段階に向く小型機

解反・スチーミング・加熱・振り落としを備えた小型機。処理幅1,800mm、本体重量600kg。

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選び方の考え方は縮絨機(スポンジングマシン)の選び方|7つの視点にまとめています。

まとめ

ウール縮絨とは、羊毛に水分・熱・力を加えて繊維を絡ませる加工のことで、その生地が縮絨ウールです。あの厚みと表面感は、どこまで縮絨したか、そのあとに起毛やシャーリングをどう組み合わせたかで決まります。

生産の現場では、「縮絨済みだからもう縮まない」と考えないことが出発点になります。裁断の前にリラックス処理をかけて寸法を確定させておけば、ロット間のばらつきもプレス後の縮みも抑えられます。

そして、どれだけ縮むかは生地ごとに違います。カタログの数字では判断できない部分なので、イツミでは実際の生地を通して確かめていただくテスト加工からご相談いただけます(可否・進め方はお問い合わせください)。厚手の縮絨ウールが通るかどうかも、実物で確かめるのが一番確実です。

よくある質問|縮絨ウールのQ&A

Q. ウール縮絨(縮絨ウール)とはどんな生地ですか?

ウール縮絨という加工によって繊維同士を絡ませ、目を詰めた生地のことです。厚みと保温性があり、強く縮絨したものは織り目が見えにくく、切りっぱなしでもほつれにくくなります。

Q. 縮絨ウールとメルトンは同じものですか?

メルトンは、しっかり縮絨したうえで起毛やシャーリングなどの仕上げを施した厚手の毛織物の呼び名です。縮絨ウールという言い方はもっと広く、軽く縮絨したウールフランネル(フラノ)のような生地も含みます。

Q. 縮絨ウールは洗うと縮みますか?

条件がそろえばさらに縮む可能性があります。縮絨は水分・熱・力によって繊維が絡む現象なので、洗濯でその条件がそろえば同じことが起こります。製品としての取り扱いは、製品に付いている取扱い表示に従ってください。

Q. 縮絨済みの生地でも、縫製前のスポンジング加工は必要ですか?

必要になる場面が多くあります。縮絨のあとの整理加工や巻き取りで入った張力が残っていると、縫製後のプレスなどで縮みとして出てくるためです。残り方は生地ごとに違うので、実測して判断してください。

Q. 縮絨ウールに接着芯を貼るときの注意点はありますか?

接着芯を貼る工程では、熱と圧力が加わります。縮絨ウールに張力が残っていると、この段階で縮みとして出てくることがあります。また、押さえが強すぎると起毛した表面がつぶれてしまいます。裁断の前にリラックス処理をかけて寸法を落ち着かせておくと、接着後の寸法変化を抑えやすくなります。表地と芯地では縮み方が違うので、同じ条件で一度貼ってみて、寸法の動き方を突き合わせておくと確実です。ズレが大きいときは、縮率の合う芯地に替える、芯地側を先に熱処理してから使うといった手もあります。接着したあとは、熱いうちに動かさず、平らな場所に広げて冷ましてから次の工程へ渡してください。接着そのものの条件については接着機の選び方もあわせてご覧ください。

Q. カシミヤも縮絨しますか?

繊維表面にスケールがあるため、条件がそろえば縮絨は起こります。ただし「細いから羊毛より絡みやすい」わけではなく、カシミヤはスケールの突起が羊毛より少ないぶん、フェルト化のしやすさ自体は低いという報告があります。とはいえ産地や原毛の状態でばらつきが大きく、風合いは行き過ぎると戻せません。穏やかな条件から始めて、テストで詰めてください。

Q. 厚手の縮絨ウールでも縮絨機に通せますか?

機種によって変わります。厚い生地では、引っぱらずに送る搬送のしかたと、処理後にしっかり冷ます冷却の作り込みが効いてきます。実際の生地でのテスト加工をおすすめしています。

製品紹介

NTS-SP5 高速・量産向けの縮絨機(スポンジングマシン)本体外観

NTS-SP5|量産向けのハイクラス機(処理速度★5)

アパレルメーカーとの共同開発機。独自発想のスチームゾーンで張力や歪みを取り除き、寸法の安定化を図ります。天然繊維・合繊織物の両方に対応。最大処理幅1,800mm。

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NTS-717FIR 高温型遠赤外線仕様の縮絨機(スポンジングマシン)本体外観

NTS-717FIR(高温型遠赤外線仕様)|厚手の生地に向くミドルクラス機(処理速度★3)

距離検出センサーによるノーテンション送り出しとバイブレーション装置、強力な冷却装置。電熱ヒーターで200℃まで上げられ、従来の蒸気式では縮みにくかった生地にも対応します。最大処理幅1,700mm。

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NTS-202HS 小型の縮絨機(スポンジングマシン)本体外観

NTS-202HS|小ロット・省スペース向けの小型機(処理速度★1)

小型ながら解反・スチーミング・加熱・振り落としの機能を備えた縮絨機。1着分に裁断した生地にも対応します。処理幅1,800mm、本体重量600kg。

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縮絨機(スポンジングマシン)製品一覧

解反加湿機から量産用の広幅機まで、イツミの縮絨機ラインナップを一覧でご覧いただけます。

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