「警報ランプが点いて機械が止まってしまった」「ヒーターの温度が上がらない」「ベルトが横にずれて流れない」。芯地接着機を毎日使っていると、こうしたトラブルは避けて通れません。生産の途中で止まると、その日の段取り全体に影響します。
ただ、こうした不調の多くは原因がある程度決まっており、症状から切り分けていけば、現場で対処できるものと、専門の点検が必要なものを見分けられます。
この記事では、低温式連続式接着機 JR-1000LTS シリーズ(イツミアサヒ製)を例に、症状から原因と対処を引けるフローチャートと早見表を用意しました。まず自分で確認できることを整理したうえで、無理をせずプロに任せるべき見極めの線引きまで解説します。
はじめに(安全のお願い)。 芯地接着機は高温・蒸気・電気を扱う機械です。内部の確認や調整を行う前には、必ず電源を切り、蒸気を止めてください。判断に迷う作業は無理に進めず、メーカーまたは販売店にご相談ください。
症状から探す:故障の早見表
まずは、今起きている症状にいちばん近いものを下から探してください。各症状の詳しい原因と対処は、記事後半の「症状別の原因と対処」で順番に解説します。
症状1:警報ランプが点いて機械が止まった
主な原因:ベルトの片寄り(蛇行異常)
まず試すこと:非常停止を解除し、ベルトのずれを修正ローラーで調整する
対応の目安:まず自分で。調整しても直らなければプロ点検
症状2:警報ランプは点くが機械が動かない
主な原因:モーター及びインバーターがオーバーロードしている
まず試すこと:主電源ブレーカーを落として10秒以上待ち、再起動する
対応の目安:それでも動かないときはプロへ相談
症状3:品物が出口で巻きついて出てこない
主な原因:ベルト表面への樹脂付着/スクレーパー・クリーニングバーの汚れ
まず試すこと:ベルト・スクレーパー・クリーニングバーを清掃する
対応の目安:自分で対応できる(日常清掃)
症状4:ベルトは回るがヒーターの温度が上がらない
主な原因:ボイラー停止でスチーム圧が落ちた/ストップバルブが閉じている
まず試すこと:ボイラーが動いているか、蒸気のバルブが開いているかを確認
対応の目安:基本確認は自分で。直らなければ温度系統はプロ点検
症状5:接着条件を確認したい
主な原因:エアー圧、温度、時間などの接着条件が合っていない
まず試すこと:エアー圧、温度、時間などの接着条件を確認する
対応の目安:まず自分で確認
故障フローチャート(全体像)
症状を上から順に「はい/いいえ」でたどると、まず試すことと、プロ点検が必要かどうかの目安にたどり着きます。全体像をつかんだうえで、各症状の詳しい手順を読み進めてください。

症状別の原因と対処
症状1:警報ランプが点いて機械が止まった
警報ランプが点いて停止する場合は、まず「ベルトの片寄り(蛇行異常)」を確認します。
(1) ベルトが横にずれている(蛇行異常)場合
テフロンベルトが何らかの原因で修正できる範囲を超えてずれると、ベルトが非常停止スイッチ(マイクロスイッチ)に触れ、警報ランプが点いて機械が止まります。主な原因は次のとおりです。
- ベルト表面の汚れや、経年劣化による片伸びで、ベルトの軌道修正が正常に効かなくなっている
- 機械を移動した際に、床の水平が出ていないことでベルトが片寄り出した
対処の手順は次のとおりです。まず非常停止マイクロスイッチのセンサーレバーを手でずらすなどして、停止の状態を解除します。そのうえで、ベルト修正用ローラーの支点ボスのネジをゆるめて、ベルトの寄りを調整します。調整の向きは上下のベルトで異なります。
上ベルトの蛇行調整
蛇行修正補助ローラーを左右に動かして調整します。
ローラー軸を左へ:投入側から見てベルトは左に寄る
ローラー軸を右へ:投入側から見てベルトは右に寄る
下ベルトの蛇行調整
蛇行修正ローラーを前後に、蛇行修正補助ローラーを上下に動かして調整します。
軸を左へ:ベルトは左に寄る/右へ:右に寄る
軸を上へ:ベルトは左に寄る/下へ:右に寄る
調整しても片寄りが直らないときは、プロ点検の見極めどころです
蛇行調整をしてもベルトの片寄りが改善しない場合、次のような不具合が隠れていることがあります。いずれも部品交換や分解を伴うため、無理に進めず点検をご依頼ください。
- 蛇行修正モーターや修正用スイッチの故障(スイッチを動かしてもモーターが反応しない)
- 回転クランクや三角板、それらをつなぐ金具などリンク部のガタつき・動作不良
- 蛇行修正ローラーのベアリングの劣化(手で回すと引っかかる、回らない、鋼球が欠けている)
- 下ベルトの幅が狭くなり、テンションに片寄りが生じて修正が効かなくなっている
症状2:警報ランプは点くが機械が動かない
ランプは点いているのに機械が動かないときは、モーター及びインバーターがオーバーロードしている可能性があります。モーターやインバーターに負荷がかかると、安全のために機械が動かない状態になることがあります。
- 主電源ブレーカーを落とす
- 10秒以上待つ
- 主電源ブレーカーを入れ直し、再起動する
再起動しても動かない場合や、同じ症状を繰り返す場合は、インバーターや駆動部そのものの不具合が疑われます。無理に運転を続けずプロへご相談ください。
症状3:品物が出口の回転スクレーパーに巻きついて出てこない
排出される品物が出口でうまく出てこない、巻きついてしまうという症状は、汚れが原因のことがほとんどです。
- テフロンベルトの表面に樹脂が付着し、品物がこびりついて剥がれない
- スクレーパーが汚れている
- クリーニングバーが汚れている
対処としては、テフロンベルトを掃除し、スクレーパーは交換するか汚れを拭き取り、クリーニングバーの布はこまめに交換します。
メーカー担当者からのワンポイントアドバイス
ベルトへの樹脂付着は、接着温度が高すぎることも一因です。適正な接着条件で運転することがベルトを汚さないコツで、結果的に巻きつきトラブルの予防にもつながります。日常清掃でかなり防げる症状です。
症状4:ベルトは回るがヒーターの温度が上がらない
ベルトは正常に回るのにヒーターの温度が上がらない場合、まずは蒸気まわりの基本を確認します。
- ボイラーが止まってスチーム圧が落ちていないか → ボイラーを入れる
- 蒸気のストップバルブが閉じていないか → バルブを開ける
それでも温度が上がらないときは、温度系統の点検が必要です
基本確認をしても温度が上がらない場合は、蒸気・電気系統の診断になります。次のような切り分けがありますが、テスターでの電圧確認など専門的な作業を含むため、安全と確実性のためにプロ点検をおすすめします。
- 温度調節器の「OUT」表示が点灯しているか
- サイトグラス(ガラスの円筒)内のボールが動いているか(動いていなければスチームトラップの故障の可能性)
- 温度センサーがヒーターに正しく接触しているか
- 温度調節器の表示に連動して電磁弁が開閉し、200Vが来ているか(電磁弁か温度調節器かの切り分け)
逆に、設定よりも温度が上がりすぎる場合は、電磁弁の蒸気もれで蒸気が流れ続けている可能性があります。
症状5:接着条件を確認したい
接着の仕上がりが安定しないときは、接着強度だけを見るのではなく、エアー圧、温度、時間などの接着条件を確認します。
- エアー圧が落ちていないか → コンプレッサーの圧力を確認する
- エアーのストップバルブが閉じていないか → バルブを開ける
- 設定温度が生地や芯地に合っているか → 条件表やテスト接着で確認する
- 接着時間が不足していないか → ベルト速度や通過時間を確認する
永久接着芯地(ポリアミド系)の樹脂が溶け出す温度はおおよそ105〜115℃ですが、ヒーターからの熱は樹脂に直接伝わるわけではないため、これより5〜10℃ほど高めの設定が必要です。生地の厚みや染料の違いで同じ芯地でも条件が変わることがあるため、本番前のテスト接着をおすすめします。
「自分でできること」と「プロに任せること」の線引き
ここまでの内容を、対応の目安として整理します。無理に分解して二次的な故障を招くのが、いちばん避けたいケースです。
現場で対応できること
日常清掃(ベルト・スクレーパー・クリーニングバー)、主電源ブレーカーの再起動、各バルブ・エアー圧の確認、軽いベルトの蛇行調整、消耗品の交換、接着条件(エアー圧、温度、時間など)の見直し。
プロ点検をおすすめすること
蛇行修正モーターやベアリング、リンク部などの部品交換、インバーターや駆動部の不具合、スチームトラップ・電磁弁・温度調節器など蒸気・電気系統の診断。テスターでの電圧確認を伴う作業。
故障の多くは「未然に防げる」
あらためて原因を振り返ると、汚れ・経年劣化・消耗品まわりが多いことに気づきます。つまり、日常清掃と定期的な点検で、トラブルの多くは未然に防げるということです。
突然の停止は、その日の生産計画に響きます。「動いているうちは触らない」より、「止まる前に整えておく」ほうが、結果的に稼働率もコストも安定します。
定期点検・メンテナンスという選択肢
とはいえ、ベアリングや電磁弁の状態、温度の精度といった部分まで自社で見るのは簡単ではありません。こうした「自社では難しい部分の点検・クリーニング」は、プロにお任せいただけます。
イツミグループでは、芯地接着機をはじめとする機械の定期点検・メンテナンスのサブスクリプションをご用意しています。年間継続型で計画的に点検を行うことで、突然の故障(ダウンタイム)リスクを抑えられます。契約期間中は消耗品の無料サービスや、修理でうかがう際の出張作業費の割引といった特典もあります。
まとめ
芯地接着機のトラブルは、症状から原因をたどれば、現場でできる対処と、プロに任せるべき作業を切り分けられます。警報停止・モーター及びインバーターのオーバーロード・巻きつき・温度・接着条件など、まずは本記事のフローチャートと早見表で当たりをつけてください。
そして、清掃や調整をしても改善しない場合は、無理に分解せず点検をご依頼ください。日頃の清掃と定期点検を組み合わせることが、安定稼働への近道です。
よくある質問
Q. 警報ランプが点いて止まりました。まず何をすればいいですか?
まずベルトが横にずれていないか確認してください。ずれていれば非常停止を解除し、修正用ローラーで調整します。調整しても直らない場合は、無理に進めず点検をご依頼ください。
Q. 警報ランプは点くが機械が動きません。どうすればいいですか?
モーター及びインバーターがオーバーロードしている可能性があります。主電源ブレーカーを落として10秒以上待ち、再起動してください。それでも動かない場合は、プロへご相談ください。
Q. 蛇行調整をしてもベルトの片寄りが直りません。
蛇行修正モーターやスイッチの故障、リンク部のガタつき、ベアリングの劣化などが考えられます。いずれも部品交換を伴うため、点検をご依頼いただくのが安全です。
Q. ヒーターの温度が上がりません。自分で直せますか?
まずボイラーが動いているか、蒸気のストップバルブが開いているかを確認してください。それでも上がらない場合は、スチームトラップや電磁弁、温度調節器など蒸気・電気系統の診断が必要で、専門的な作業になります。プロ点検をおすすめします。
Q. ボタンや小ばさみなどを誤って投入してしまいました。
ボタン・物差し・小ばさみなどの異物はテフロンベルトを破損させます。投入しないよう注意し、混入した場合は運転を止めてベルトの状態を確認してください。
この記事で扱った機械

低温式連続式接着機 JR-1000LTS(イツミアサヒ製)
本記事で解説した蒸気式ヒーターによる安定した温度管理、太径ローラーとエアー加圧による均一な加圧、つなぎ目のないテフロンベルトによる安定搬送を備えた連続式接着機です。蒸気式ヒーター選択時は電熱式の約1/8のランニングコストで運用できます。